有期雇用契約の不更新(雇止め)のリスクと実務対応について

前回の記事にて、

反復更新の回数・期間や更新の期待値が高いほど、事実上の解雇として認識されるリスクが高まりますので注意が必要です。

有期労働契約の更新について

と最後に記しましたが、今回はこちらの解説をしていきたいと思います。

わかりやすく説明するため、簡略化した表現を使用しますため、法律実務家の方はご寛容にお読みいただけると幸いです。

まずは基本的なことからですが、労働契約(雇用契約)は

  • 期間の定めのある契約=有期雇用契約
  • 期間の定めのない契約=無期雇用契約

があります。

有期雇用契約は契約期間があるので、期間が終了するたびに契約を更新します。イメージしやすいのはサブスクみたいな感じですね。

一方で、無期雇用契約は期限に定めがありません。そのため一度契約したら、どちらかが解約を申し出しないと契約解除にはなりません。労働者から契約解除を申し出することを「辞職」と言い、使用者から解約の通知をすることを「解雇」と言います。いきなり解雇=解約することにこだわらず、「会社の業績が苦しいから申し訳ないけどやめてもらえないか」というような退職のお願いをする場合は、「解雇」ではなくて「退職勧奨」と言い、これは労働者が受け入れるかを決めることができます。

辞職であれ退職勧奨であれ、どちらかが解約したい、と申し出をして双方が合意すれば合意解約(合意退職)となります。一般的な退職届の申し出による退職は概ねこれに該当します。

他にも就業規則には上記のような合意退職以外にも、定年だったり休職期間満了時に復職できなかったり、労働者が死亡したりした場合など一定の条件で退職する規定があり、それらの条件を満たすと退職とする契約になっていたりもします。

さて有期雇用契約に話を戻しますと、有期雇用契約はその期間働きますよ(働いてくださいよ)という契約なので、原則としてこの期間が終了したら契約は終わりです。

そして一旦契約は終わるのだけれど、お互いが合意の上で契約を更新することが多々あります。

なので、有期雇用契約は何らか特約等がない場合は、原則としてその契約期間で終了です。

ただし注意しておかなければならないのは、例えばずっと同じような条件で雇用契約を更新してきたのに、ある日突然、「今回の契約で終わりです。次回更新しません」と言われたら労働者としてはびっくりしますよね。

初回更新や2回目更新ならともかく、相応の期間において反復契約更新をしてきたので、当然次回も更新されるはず、と本人も考えているし、自分だけでなく他の労働者も同様に更新されていたりすると、自ずと更新の期待値は高まるものです。

このような場合、雇止めが「解雇と同じように厳しく判断される」ことがあります。法律上は、一定の場合に、労働者から更新の申込み等があれば、使用者が従前と同一の労働条件で契約更新を承諾したものとみなされる、という整理になります。つまり、会社としては「契約期間が満了したから当然に終了」とは言い切れなくなるわけです。

また契約更新の手続きが蔑ろにされていて、形式的には有期雇用契約の手続きは踏んでいても、更新の面談がされていなかったり、更新の手続きも更新期間から遅れてなされていることが常態化していたりすると、「更新手続きは形式上のものなんだな」と考え更新を期待することが当然と認識されることになり、雇止めであっても、解雇と同様に厳しく有効性が判断される余地が出てきます。

上記のように本来は雇止めなのだけれど、実質的には解雇だとみなすことを雇止め法理といい、労働契約法第19条で法令として定められています。

(参考)https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/pamphlet06.pdf

以上が、前回の記事の最後の部分で注意喚起をした内容です。

では自社の有期雇用契約が上記のような状況になっている場合、会社としては、当該労働者との契約終了を検討する場合に、どのような対応を取るべきか、というのが実務対応になります。

大きく方向性を示すと以下のとおりです。

① 上記の実質解雇リスクは飲み込んで、契約不更新で終了する。
② 実質無期だと見做して、退職勧奨を行いあくまで合意退職の道筋を探る。
③ ①と②の中間のような位置付けで、不更新には違いないが、紛争リスクを避けるため、不更新について争わない旨の合意を取り付ける。

上記のうち②③では状況によって(雇止めしたい理由が労働者に帰責性が高いと会社が考えているか、そのような事実があるか、それを労働者が自認しているかなど)、解決金や退職合意金の予算を確保して交渉材料とする必要があります。

この点は個別の事案によって検討すべきとなりますが、一般論としては会社の都合だけで雇止めするのであれば予算採りは必要でしょう。

なお状況によっては争われたとしても(訴訟になったとしても)①で進めないと、会社の組織秩序が保てない、ということもあり得るので、この判断は事案ごとによって変わってきます。

なお、実際に雇止めを検討する場合には、上記の雇止め法理の問題だけでなく、手続面にも注意が必要です。一定の場合、使用者は契約期間満了日の30日前までに雇止めの予告をする必要があります。また、労働者から雇止めの理由について証明書を求められた場合には、使用者はこれを交付する必要があります。

つまり、「更新しません」と伝える場合でも、いつ、どのような理由で、どのような手続で伝えるのかが重要になります。

(参考)
https://www.mhlw.go.jp/content/001249464.pdf